2022年 6月の過去ログ

2022-06-25

来し方の記・配達

愛真堂書店







大学に入学したもののともかく当座のお金を稼ぐために身体を張るしかなかった。
手っ取り早く稼げるのはデパートの配送だった。
今から60年も前の記憶だが、当時は配送は自転車の荷台にガラ箱という大きな箱を括り付けて荷物を入れて運ぶ。
この仕事は常時あるわけではなく、お中元とお歳暮の時期に学生に声がかかるのだった。
しかし、国立大学である学芸大は夏休みに入るのが遅かったので仕事にありついたのは7月初めではなかったろうか。
ありついたと言っても、周りやすい小金井市内や周辺はすでに私立の大学生がとっていて、国立、立川などのはずれの方まで炎天下を自転車をこいで回った。
ただ、品物一個についていくらという計算で頑張ればそれだけ実入りはよかった。

その日はまだ梅雨が続いていてそぼ降る雨の日だった。
ともかく品物を濡らさないようにビニールをかぶせて小金井の周辺を回り、あと数個となった。
小金井の北口の大通りを駅に向かって下っていたところ、小さな本屋の前で前輪が何かに乗り上げてバランスを崩して見事に転んでしまった。
幸い、品物は無事だったが、なんとも無様でこの時は本当に泣きたくなった。
と、物音に気付いて店から店主が飛び出してきて、自転車を起こしてくれた。
奥さんと思しき人がタオルを持って出てきてくれた。
店主に「学芸大の学生さん?」と聞かれた。
気持ちが落ち着いたところで、受け答えすると、「よかったら家で働かないか」と言ってくれた。
「そんなにたくさんは払えないけれど、昼食付、明日からでも来ないか」と言われた。
ちょうど月々に出る雑誌の配達とその他モロモロの手伝いをしてくれる人を探していたというのだ。

昼飯付きというのが何よりだった・・・ほぼ、毎日下宿屋で出される朝晩のご飯だけで済ませて昼飯を食べるまでの余裕はなかった。
即決で、次の日から「愛真堂書店」に勤めることになった。
ご主人も奥さんも福島の人でチョットなまりがあったけれど親切な人たちだった。
それから、大学を卒業するまでこの本屋に勤めて、本屋という仕事のイロハを学んだ。
本屋は外から見ると奇麗な仕事のように思えるが、結構ハードで汚れ仕事だった、
特に大変なのは雑誌や書籍の返品の仕事で基本雑誌は1か月、書籍は3か月で返品しないと在庫として残ってしまうのだ。
そしてもう一つは万引き対策・・・
本の利は薄く2割ぐらいなので一冊盗まれるとそれを埋めるのに何冊も売らなければならないのだ。








yodaさんの投稿 - 17:31:13 - - トラックバック()