"季節だより風だより"

07 / 21

季節だより風だより

あふれる心








六月の初めに旅立ったご近所のH子さんを偲ぶ茶会をした。
H子さんはこの住宅地に越してきた時からタカコサンの友達であった。
訃報が入った時に四国の松山に出かけていて通夜には間に合わず、葬儀だけに参列した。
通夜は『お別れの会』として行われ親しい人たちが集まり思い出を語りあったそうだ。

今回の『偲ぶ茶会』はご近所でごく親しくしていた人たちをお招きした。
H子さんのご主人、お隣のKさん、そして前の家のMさんだった。
まず床の間のしつらえ。
軸は生前にH子さんが詠んだ歌を色紙に仕立ててもらった。
       白紙に
         みどりうみ空
              風のいろ
         あふれる心 映してもなを
歌を写してくれたのは書の先生をしているお隣のKさん。
花はトルコ桔梗の白を挿した。
正面に遺影を飾り、脇には歌に詠まれている『みどりうみ空風のいろ』を映した水彩画。
抹茶は『面影』、お菓子はH子さんの出身地金沢の和菓子店『森八』の葛切り。

旅立ちの2週間ほど前に、葉山の海に最後の家族旅行。
歌を詠み、絵を描くための旅行でもあった。
海の見える部屋をとり、病院で輸血をしてから出かけたそうだ。
ほとんど食べ物が身体の中に入る状態ではなかったけれど最後の気力を振りしぼっての覚悟の旅だった。
「あふれる心 映してもなをのところにくると、どうしても涙が出てきて筆が進まなくなってしまうのですよ。」
歌を写したしたKさんが声を詰まらせながら言った。
遺影はにこやかに微笑んでいる。
水彩画は開け放たれたガラス戸とカーテン、その向こうにはベランダがあって椅子が置いてある。
初夏の風が部屋まで吹き込んでいる。
そして穏やかな海と空がみえる。
淡いブルーで彩色されている。
写しても映しても写しきれない思いが伝わってくる。
でも歌も絵もたくさんのメッセージを伝えてくれていた。

「なかなかいいでしょ。」
とはにかみながら言っている声がどこからか聞こえてきたような気がした。
  
yodaさんの投稿 - 18:30:28 - カテゴリー: 依田先生の徒然日記
コメント

川上さんの投稿:

2度に亘って、家内の思い出を書いていただき感謝に耐えません。これまでずぅーと多分、ブログに取り上げていただいているのではないか、とは思っていたのですが気持ちの踏ん切りができず今日まで先生のブログを開けるのをためらってきました。今日読ませて頂き涙腺はゆるみ、胸疼く思いの中にいます。過分のお褒めを頂いて感動しています。所で今月から家内の後を引き継いで水彩画の会に入会しました。絵筆を握ることはないと思っていたのでしたが、この3月頃から家内の手ほどきを受けてはいたのです。「老にして学べば則ち死して朽ちず」とか、兎に角寄り添って、楽しんで、描ければ・・・と思っています。
2009-09-24 23:12:08
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