"モノ語り"

07 / 24

モノ語り

食卓塩のフタ









「またフタが開いている。何度言ったら分かるの、塩は湿気ると固まってしまうのよ。」
妻はそういって開いていると言う赤いフタとガラスの小瓶をかざして見せた。
「俺は閉めたつもりなのだがな・・・」
と言うと、
「開いていました。あなたの場合フタはかぶせてあるのだけれどねじってないのよ。かえってそれが悪いのね。一応フタが被せてあるから持ってしまうと下に落ちるの。」
カウンター越しに身振りをまじえて口撃してきた。
我が家ではこの数年、食事のしたくは夫の役割で洗い物は妻がするパターンが定着してきた。
夫はフライパン料理が多いので、味付けに塩を振って胡椒を振ることが多いのだが、胡椒の場合はフタがビンに取り付けてあるので閉めているらしい。
塩はフタをはずして使うのでついついわすれてしまうのだ。

もう何回注意されたことだろうか・・・この次にはちゃんと閉めようと思うのだがついつい料理のほうに夢中になって忘れてしまう。
「もう一つ言っておきたいのだけれど・・・一つのビンを使い切るまで新しいのを開けないでよね。」
実はフタを開けっ放しにしておいたために古いほうは底の方に固まってしまっていたのだ。

「あれ、固まってしまっている、ほらね、シッケてしまったじゃない。」
どうやら、気がついてしまったようだ。
新しいのをあけるときに固まってしまったものを処分しておけば良かったのだが、ビンの中に箸を入れてかき回せばまだ使えるなどと思ったのがまずかった。

「あなた、料理の時に道具を使いすぎよ。片付ける人のことを考えているのかなぁ。」
食卓塩のフタから別の方向に口撃が移っていった。
「それに、使った道具を出しっぱなしにしているから片付けをする時に食器が流しに置けないのよね。」
どんどんと問題はエスカレートしていく。
今回に始まった指摘と言うわけではないのだが、今日は何か気に障ることがあったに違いない。
何も口答えはせず夕刊を読んでいる振りをして舌鋒しのごうとした。
「あなた、ちゃんと聞いてるの。」
こちらの作戦などお見通しなのだ。
「これからはビンのフタを閉めればいいのだろ。」
と言うと
その一言が更に火をつけてしまった。

パンドラの箱のふたが開いてしまったようなものだ。
yodaさんの投稿 - 16:30:45 - カテゴリー: 依田先生の徒然日記
コメント
コメントはありません
コメントを追加
このアイテムは閲覧専用です。コメントの投稿、投票はできません。
トラックバック