"風が立つ"

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風が立つ

ちぎれ雲。
堀辰雄。


 雨戸を開けると突然のように一陣の風が部屋の中に吹きこんできた。昨日までとは明らかに違う風だ。肌に当たる心地が柔らかい。

 犬を連れて歩くいつもの散歩道の空気が変わった様に思える。空は高く澄み渡り、ひとひらのちぎれ雲が南から北へと流れていく。と、夏草の生い茂った草叢のあたりから風が立った。そして、まだ若いススキの穂を揺らしながら、吹き渡っていった。朝一番に感じた風と同じであった。萩もゆれ、コスモスも揺れる。遠く甲斐駒ヶ岳、薬師、地蔵、観音の三山がはっきりと稜線を見せている。夏の朝には珍しいことだ。八ヶ岳高原は今日から秋にはいったのかもしれない。

 『風立ちぬ』 堀辰雄の小説を思い出した。舞台になっている富士見のサナトリュウムは車で30分ほどのところにある。高校生の頃初めて読みそれから何度かよみかえした。年をとると共に作品の感じ方が違った。今読めばどんな感想になるだろうか。

 堀辰雄は母も好きな作家だった。数年前,母と一緒に富士見の結核療養所までわざわざ訪ねたことがあった。そして、堀辰雄の記念館を見た。
あの時、母の叔母の連れ合いが同じ場所で療養生活をしていたことを話してくれた。
昭和も始めのころだったと言う。今ごろあちらで再会しているかもしれない。


 







yodaさんの投稿 - 20:41:10 - カテゴリー: 依田先生の徒然日記
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