"かたくら通信・作陶展"

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かたくら通信・作陶展

まがい・もどき







昨日のことだった。作品展示のためにタカコサンとギャラリーに出かけていった。
あらかた作品を並べ終わったときに80歳は越えていると思われるようなご夫婦が突然ギャラリーに入って来た。
「見せてもらえませんでしょうか」
少し腰の曲がったご婦人の方が言った。
「明日からなんですが、まだ展示はこれから変わりますがよろしかったらどうぞ」
ギャラリーのオーナーで今回の絵の出品者のAさんが言った。
「陶芸の作品の作者はプロですか、アマチュアですかね」
夫の方がチョッと横柄な口調で聞いてきた。
「ど素人でもなくプロでもなくセミプロぐらいのところでしょうかね」
そういうと、なんとなく納得したようで、奥さんに続いて中に入って来た。
そして、焼き締めの作品の前に立って、
「備前まがいだな」
と呟くように言った・・・焼き物には造詣が深いらしい。
けれど、いきなり入ってきて「まがい」はないだろうと思った。
チョッとカチンときたけれど、そこは抑えて
「備前まがいではありません。土は信楽を使っていますので、信楽もどきです」
と返した。すると奥さんが気がついて、
「あなた失礼でしょ・・・」
と言ったが、動じる風はなかった。
「備前や信楽を焼こうと思ったわけではありません、サヤに入れて籾殻や炭と一緒に焼いた結果まがいとなっただけなんですよ」
なるべく穏やかに説明した。
「実は私も焼き物を40年ほどやっていたのです。ちょうどブームになり始めた頃に主人に進められて始めたのです。本当は主人の方がやりたかったみたいなんですけれど、仕事が忙しかったので・・・」
ご主人はそのままひとわたり作品を観て、今回の目玉の作品である一輪挿しを手に取った。
黄瀬戸の釉薬が流れるように掛かった作品で一輪挿しの中で一番のお気に入りだった。
それから二人は何事もなかったように失礼を謝して出て行った。
けれどしばらくして戻ってきて、できれば一輪挿しがほしいといった。
それも、さっきのお気に入りの作品であった。
気に入ってくれたのなら・・・それも一番愛着のあるものを選んでくれたのでお譲りすることにした。
値段を言うと・・・そんなに安くていいのかねといってくれた。

奥さんは「よい思い出にしますよ」嬉しそうに言った。
yodaさんの投稿 - 21:18:15 - カテゴリー: 依田先生の徒然日記
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