"遠近両用図書室・鬼平犯科帳"

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遠近両用図書室・鬼平犯科帳

長谷川平蔵






中村吉右衛門続きで、「鬼平犯科帳」の事を書いておきたい。
池波正太郎がこの作品を発表したのは1967年で「オール読物」12月号だったそうだ。
この年私は大学を卒業して東京都西多摩郡秋多町立東秋留小学校(現あきる野市)で新卒2年目の教師として勤めていた。
当時、甲府の実家では父が雑誌「オール読物」と「文芸春秋」「小説新潮」をとっていた。
そこで、私は帰省するとそれらの古い号を当時住んでいた福生の下宿にまとめて持ってきて読んだものであった。
「鬼平」を初めて読んだのは次の年ぐらいだと思うが作品の初出とほぼリアルタイムに読んでいたのだ。
それまでの「オール読物」の連載では、村上元三、山本周五郎などが有名だったが、池波のこのシリーズの登場は衝撃的だった。
火盗改めという職がある事を初めて知り、それに対する盗賊たちをそれぞれ個性的に描いているのが新鮮であった。
そして、火盗改長官の長谷川平蔵を取り巻く人々が魅力的に描かれている。
特に、密偵と呼ばれる元盗賊達の活躍が今までの時代小説にはない斬新さであった。
それらの人々の名前がまずいい・・・大滝の五郎蔵、小房の粂八、相模の彦十、伊三次も忘れてはならない。
そして女密偵として活躍するおまさの存在も大きい。
これらの密偵達の性格をきちんと書きわけていて、作者の愛情が注がれている。

後にテレビでシリーズ化されてその役を演じる役者とイコールとなったが、一番好きだったのは相模の彦十役の江戸家猫八、小房の粂八の蟹江敬三、二人とも物故してしまったが代わりの人では役は務まらないだろう。
おまさ役の梶芽衣子がまたいい・・・ただシリーズの後半になるとちょっと老けてしまったが初めの頃は匂うような色気だった。
これらの密偵という言葉をはじめとして、盗みにまつわる様々な言葉、たとえば急ぎ働き、畜生働き、流れ働き、引き込みなどという言葉は殆ど池波の造語だそうだ。
登場人物として平蔵の配下である与力、同心なども個性的である。
与力の小林金吾を演じているのが中村又五郎である。
そして忘れてはならないのが「兎忠」こと木村忠吾である、調子が良くて色好みで、さしたる働きは出来ないが平蔵にこよなく愛されている。
鬼平が初めてテレビ化された時の兎忠はなんと古今亭志ん朝が演じていたが現シリーズでは尾実としのりの当たり役となっている。
小説として読んでいるとこれらの人物が役者と重なり合うけれど違和感はない。
そして主人公の長谷川平蔵は過去に松本幸四郎(先代)、丹波哲郎、萬屋錦之介が演じて来たが嵌り役は中村吉右衛門である。
妻役で多岐川裕美もなくてはならない存在となっている。
鬼平を語り始めたらきりがない・・・
出てくる盗賊たちの名前もおどろおどろしくて実在の人物に思えてくる。
蛇(くちなわ)の平十郎、血頭の丹平などなど・・・


yodaさんの投稿 - 17:00:22 - カテゴリー: 依田先生の徒然日記
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