"遠近両用図書室・剣客商売"

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遠近両用図書室・剣客商売

義父






鬼平犯科帳におくれること5年、1972年に小説新潮に「剣客商売」が始まった。
しかし、私は結婚して3年目でちょうど町田の藤の台団地に住むようになり、勤務校は西多摩から世田谷の若林小に転任して6年生を担任していた。
公私ともに忙しく、時間的、経済的な余裕もなかった。
甲府の実家にもほとんど帰る事もなくなり、父の取っていた本をかすめ取って来ることもなくなってしまった。
「剣客商売」の連載が始まったことは知っていたが、初出をリアルタイムで読んだわけではなかった。
何年かして、毎月の作品が何作かたまったところで新潮社が単行本にしたものを読んだ。
それも、買ったわけではなく、タカコサンのお父さん・・・義父が買ったものを読ませてもらったのだ。
義父は娘の為ならどんなことでも厭わず尽してくれる人で、娘婿がこのシリーズに興味を持っている事を知って新刊が出る度に買ってくれたのだ。

このシリーズは「鬼平」に比べると登場人物も少なく、集団から個人にシフトしたような趣があったが、主人公の秋山小兵衛が大変魅力的な人物に描かれていた。
ともすると剣客物はストイックな人物として描かれるが、秋山は洒脱で商売を名乗るくらいであるからお金に対しても捌けている。
また、時の権力に対してもよしみを持っていて賄賂政治、悪徳政治家と言われた田沼意次と懇意であり、息子の大治郎は田沼の娘と結婚する。
其の田沼の描き方も開明で世の中を見通している政治家としている。
秋山は息子の大治郎よりも若いおはるという娘を後妻に迎えていて娘と間違えられる。

このシリーズもテレビの時代劇として放映されているが、最初は山形勲が小兵衛を演じ息子の大治郎は加藤剛が演じていた。
それから、池波がこの物語のモデルとして想定した歌舞伎役者の中村又五郎が小兵衛を演じたこともあったがなんといっても嵌り役は藤田まことであった。
妻を演じたのが小林綾子でこのコンビは何ともほほえましかった。
今でも時代劇チャンネルで繰り返し放送されているが何度観ても面白い。
脇を固める人物で岡っ引きの弥七の三浦浩一が渋い、そしてその配下の傘徳が良い。演じるは山内としおという役者だが、他ではあまり見かけないがまさにはまり役。
もう一人、小兵衛が通う料亭の女主人のおもとを演じる梶芽衣子も好きである。
このシリーズの舞台は徳川家宣の治世下の江戸の町だが小兵が住んでいるのが鐘ヶ淵という所で船を使う場面が何度も出てくる。
この風景は実は滋賀県近江八幡市がロケ地で琵琶湖の葦原を手漕ぎの船で渡って行くのだ。
私はわざわざ子手漕ぎの船に乗りに行き小兵衛気分を味わってきたのだ。


yodaさんの投稿 - 17:37:19 - カテゴリー: 依田先生の徒然日記
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