"遠近両用図書館・仕掛人・藤枝梅安"

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遠近両用図書館・仕掛人・藤枝梅安

小説現代






鬼平、剣客商売を語ったので池波の創造したもう一人の主人公の藤枝梅安についても触れておかねばなるまい。
初出は「仕掛人藤枝梅安」であるが小説現代に連載されたもので、毎月というわけではなく作品数は20篇と少ない。
けれどその物語は強烈で今までにないキャラクターが創造された。
人殺しを専門とする殺し屋でその使う道具が鍼であり、吹き矢であった。
普段は鍼医者として評判の藤枝梅安と楊枝作りを生業としている彦次郎そして後から仲間として加わる小杉十五郎である。
彼等はそれぞれ暗い過去を背負っていて、金によって人殺しを受けおう、
鬼平は悪人をつかまえる側、秋山小兵衛は権力に近い所に居て悪を懲らしめる。
しかし梅安は毒をもって毒を制する・・・・善と悪の境目にいるモノが極悪を退治していく。
発想の面白さからいうと仕掛人が一番おもしろいと思った。

ところでこの作品が掲載された「小説現代」だが版元は講談社である。このところ雑誌の販売が低迷していて来秋にはリニューアルのために1年半休刊するとの事。
「オール読物」(文芸春秋社)「小説新潮」(新潮社)に比べると歴史が浅いだけ苦戦を強いられたのかもしれないが、私はこの雑誌には思い入れが深い。
1963年(昭和38年)の創刊でその頃私は大学の2年生であった。
当時は教師になるつもりはなく出来レバどこかの文学部に転入して、本格的に文学を学びたいと思っていた。出来るなら物書きを生業としたいと密かに思っていた。
そして、この雑誌が「小説現代新人賞」なるモノを募集していることも知った。
けれど生来の怠け者で転学するような才もなく、経済的な余裕もなかった。
それに次の年に教育実習をして子ども達を教える仕事も悪くないなと思った。
それから教師となり結婚もして3年目昭和47年、この年の小説現代新人賞が発表された。
『さらばモスクワ愚連隊』作者は五木寛之・・・その鮮烈な作品にショックを受けた。
紙背からジャヤズが聞こえてくるではないか。
小説を書くなど夢のまた夢と打ちのめされた思いになった。

閑話休題、仕掛人に戻るがこの作品の魅力は悪が極悪を成敗することにあるのだが、作品のなかに食の場面が出てきて梅安と彦次郎の料理が魅力的だった。
それは江戸時代から戦前まで続いた江戸の庶民の料理であった。
鬼平にも剣客商売にも料理の場面が出てきてそれを「包丁ごよみ」のような形で再現し1冊にまとめたものが上梓されているが、私は梅安の中に出てくる料理が好きで何度か試してみたものだった。

yodaさんの投稿 - 16:11:03 - カテゴリー: 依田先生の徒然日記
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