"遠近両用図書室・ぼくたちのリアル・戸森しるこ・講談社刊"

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遠近両用図書室・ぼくたちのリアル・戸森しるこ・講談社刊

課題図書






昨日は私の書いた本が課題図書になったことを書いたけれど、年末から年始にかけて今年度の課題図書を読む機会があった。
先日紹介した「チキン」も今年度の課題図書だが、今回は「ぼくたちのリアル」という本である。
この作品は第56回講談社児童文学新人賞を受賞した。作者は1984年生まれの人でこの作品を期にこれからブレイクしていくだろうと思われる。
作品を読んで思ったのは、今までにないタイプの登場人物が出てくることと、主人公たちの名前がいわゆるきらきらネームである事。
ただ物語は今の子ども達の抱えている問題を描き、児童文学のセオリーを踏んでいる。

まず、そのセオリーだが主人公たちが欠損家庭(何とも厭な言葉だが)の児童であること。
児童文学の名作と呼ばれる作品の多くはこのセオリーにのっとっている。
たとえば,トムソーヤ、赤毛のアン、などなど・・・今年度の課題図書のフィクションは三作とも主人公は母がいない、母と別居、父がいないという設定である。
このようにすると物語を作るうえで主人公たちにいろいろな問題が生じやすいのだろう。
ちなみに私の「ぼくってだれ」は、父さんがいて母さんがいる事が現在の多様な親子関係がある中ではかえってマイナスの要素となってしまったようだ。

次に主人公たちの名前であるが、『リアル』『アスカ(名前ではなく名字の一部だがそのように呼んでいる)』『サジ』であり今までの児童文学では余りない珍しい呼び名だと思える。もはやキラキラネームは市民権を得ているようで、今年の正月にきた年賀状の中にも振り仮名をしてもらわないと絶対に読めない名前がいくつもあった。
おそらく学校に上がって担任の先生を困らせるだろうと思った。

そしてこの物語の今までにない特徴として登場人物の設定である。
主人公のリアルは誰にでも好かれ何でも出来るヒーローのような少年。
それに対してリアルの幼馴染で父親同士が友達のアスカは、彼に対してコンプレックスを持っている。
そしてそこに転校生のサジという少年が絡んでくる。
美少年でリアルに対して思慕の念を持っていて、明らかに今までの物語には登場してこなかったタイプである…ジェンダーレスなのだ。
けれど物語はこの三者三様がうまく絡み合って展開している。
子ども達はこの3人の内リアルとアスカには自分を重ねて読むことが出来るだろうがサジをどのように理解するかについては興味のあるところでる。

児童文学の中にも明らかに新しい波が来ているように思えた。


yodaさんの投稿 - 17:35:01 - カテゴリー: 依田先生の徒然日記
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