"物語・8月15日の卵・1945年3月30日・夕方"

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物語・8月15日の卵・1945年3月30日・夕方

赤飯






居間に入ると、煮物のいい匂いがした。食卓にはすでに料理が並んでいた。
「できれば鯛のお頭付でも並べたいところだけれど、このところ鰯だってめったに手に入らないからね。境川の実家から卵だけは届けてもらえたのでたんと食べとくれ」
卓の上には大きなドンブリに里芋と大根の煮物が盛り付けてあり、つやつや光った卵焼きが輝いて見える。
「歓迎会だから、赤飯を炊いてみたのよ。ちょうどもち米もあったのでね。小豆はばあちゃんが、姪っ子のために作って、そのままにしておいたお手玉があったのを思い出してほどいたら十分使えるのよ。砂糖でもあればお汁粉にでもしたいところだけれどね」
「赤飯を食べるなんて父さんが出征した時以来よ。2年も前だよね」
よし乃は勝彦の方を見ながら言った。
「家だって同じようなものよ。幸一が親方の所に修業に入る前の日だったよ。何が食べたいと聞いたら赤飯と言うのよ。それも小豆じゃなくて甘く煮たうずら豆にしてくれってね。この辺りでは赤飯を甘くするのよ」
勝彦にはその味は想像もできなかった…赤飯はゴマ塩をぱらぱらと振り掛けて食べるとばかり思っていたのだ
「残念だけれど、砂糖もウズラ豆を甘く煮るほど手に入らなかったのでそのかわり卵焼きを甘くして置いたからね。」
あのつややかな黄色は砂糖入りだったのか・・・勝彦は思わず生唾を飲み込んだ。
「姐さん私何か手伝うことがある。」
「あらかた準備は出来たから、お二階に行ってばあちゃんを起こしてもらうかね。幸一は6時には来る事になっているから・・・今夜は泊っていくので、勉強のことは駄目だけれど、学校の事でも聞いてみるといいよ。」

柱時計が6時を告げて、5分ほど経った時、お店の扉が開く音がした。


追記
昨日のランドセルの件であるが少し謎が解けた。
先ほど(午後5時半頃)ランドセル少年のお母さんが我が家にお礼に見えた。
何故ランドセルを放り出しておいたのか・・・実は家に帰ってから気になることを見に行こうと思ったけれど、家に帰れば、すぐに宿題をやるという決まりになっているのだそうだ。だから、家をすぐには出られなくなるので、電柱の下に置いたのだそうだ。すぐにもどるつもりだったが、戻ってみたらランドセルが無くなっていた・・・かなり慌てたそうである。
けれど、彼が気になって戻って行ったことについては依然謎である。


yodaさんの投稿 - 17:25:58 - カテゴリー: 依田先生の徒然日記
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