"物語・8月15日の卵・4月2日・午後"

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物語・8月15日の卵・4月2日・午後

モノの名前






「木の又もちょうどいい具合に切ってあるなぁ。」
「ところで、この木の又になった部品の事なんて言うのかな・・・」
「そういわれると、この部品のなまえはしらねえな。木の又なんていうのもおかしいよな」
「オレが前持ってたのは、針金で出来てたから木の又じゃないもの。」
「そうだな、それなら俺らで名前を付けちまえばいい・・・」
「刀なんかで持つところをツカて言うから、パチンコも武器みたいものだ。ツカが呼びやすと思う。」
「いいね、ツカか・・・そういえば弾を込める皮の名前もないナァ。その皮はどうしても見つからなかったんだ」
「これだけのゴムとつかがあれば上等だよ。弾込めの皮は代用で布でもできるし、自転車のタイヤを切っても出来るかもしれん。名前は弾込めにしとくか・・・」
二人は取りあえずの名前を決めて置いた。

「このツカは生木だから、皮を剥いちまった方がいいかもしれん。勝っちゃん切るもの持ってるか・・・オレは兄貴の小刀をくすねてもってきたけどな」
「昨日、ゴムカンの材料と一緒に津村さんの家から義彦さんという海軍兵学校に行っている人の肥後守をもらってきたけど、チョッと錆ているので切れるかどうか分からない」
「実は兄貴の小刀も手入れをしていないので錆ちまってる。」
武は小刀を出して見せてくれたが確かに刃もかけていてかなり錆が浮いていた。
「勝っちゃんの肥後守を見せて・・・これもチャンと砥がないと切れんな。そうだ、秋元鉄工所のジイサンに頼めば砥いでくれるかもしれんから行ってみるか」
「そのおじいさんてどういう人なの」
「おれんちの遠い親戚にあたる人で、この町でずっと、鍛冶屋をやっていて、俺のことを赤ん坊の頃から可愛がってくれているんだ。オレのホントのジイサン見たなもんだ」
武はそう言って、勝彦の持ってきた材料をまとめて、金山神社をて100メートルほど先にある工場に訪ねて行った。
工場と言っても入口のガラス戸は閉まっていて、中には機械らしいものは何もなかった。
「ジイチャンいるか、自転車屋の武だけんど、小刀砥いでくれねえか」
武は勝手に戸を開けて中に入り作業場の奥に声を掛けた。
すると薄暗い部屋からのっそりと白髪頭のおじいさんが出てきた。

yodaさんの投稿 - 18:21:36 - カテゴリー: 依田先生の徒然日記
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