"季節だより花だより・馬酔木"

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季節だより花だより・馬酔木

大和路・信濃路








『春の奈良へいって、馬酔木の花ざかりを見ようとおもって、途中、木曽路をまはつてきたら、おもいがけず吹雪に遭いました。』
堀辰雄の「信濃路」の中にある「辛夷の花」の冒頭の一節である。
春になると必ず書架から出して毎年読む。
この作品は1943年3月に書かれたもので、私が出会ったのは中学2年の時で国語の教科書に載っていた。
私にとっては初めて出会った文学作品であった。
以来、堀辰雄の作品のほとんどは読んだが、この年になると全て忘れてしまっているが、この作品だけは原点回帰で大事にしている。
テキストは昭和29年に発刊された『大和路・信濃路』で人文書院が上梓したもので、当時の値段で550円とある。
帙に入った豪華本で実は何故かこの本が我が家にあったのだ。
装丁は恩地孝四郎で写真が入江泰吉であった。
本の大きさは縦が18センチ横が18.5センチで正方形に近い。
けれど、大学2年の時に人に貸して返ってこなくなり古本屋でずっと探していた。
そして20年ほど前に見付けて・・・その時買った値段は8000円だった。
ただ、この本には蔵書印が押してあって、前の持ち主は大石さんと言うらしい。

この作品を読んだ時には馬酔木の花なるモノを知らなかった
そして自分も春の奈良に行って馬酔木の花を見てみたいと思った、
その願いがかなったのはそれから15年ほど経って、結婚してタカコサンと浄瑠璃寺を訪ねた時だった。
それから、八王子に居を構えて20年前に家を建て替えた時に茶庭に景色の一つとして馬酔木を植えた。
以来毎年春告げ花の一つとして枝先に多くのつぼ状の花をつけている。
今年も今が盛りである。
名前の由来は馬がこの葉を食べると酔って、足がなえるところからついたそうだ・・・馬がアシヒク(足痛)さま。
馬酔木を人間が食べるとどうなるか・・・やはり中毒症状を起こしてひどい場合には命の危険もあるそうだ。

今日は昨日とうって変って朝から寒い。
茶庭の蹲の側にある馬酔木も寒そうに風に花房を揺らしていた。
それでも今日は「啓蟄」だそうだが、今にも降りだしそうな空で、夜は本降りとなるそうだ。

このひと雨で春がまた一歩近くなるに違いない。



yodaさんの投稿 - 17:10:31 - カテゴリー: 依田先生の徒然日記
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