"季節だより花だより・辛夷の花"

03 / 07

季節だより花だより・辛夷の花

コブシ・木蓮







予報通り今日は朝から絹糸のような雨が音もなく降っている。
一日、することもなく部屋に引きこもっているので、昨日記した堀辰雄の「辛夷の花」の本文について書いておきたい。
この作品は教科書に載るくらいなので、エッセイ風の掌編である。
主人公と思しき夫婦が東京を発ち中央本線で甲斐路、信濃路を経て塩尻から中央西線で木曽路を旅していく。木曽福島で一泊して次の日はあいにくの吹雪となる。
列車に乗り込むと木曽の谷の向こうにはすっかり春めいた明るい空が広がっている・・・
車内にはどこか湯治にでも行くらしい商人風の夫婦連れと厚ぼったい冬外套を着た男の客が乗っているだけである。
妻は山側の席に座って本を読みふけっている、私は谷川の席で木曽川を眺めている。
と、夫婦者が「向こうの山に白い花が咲いていた」と言い「辛夷の花だで」と会話しているのを耳にして自分も車窓から辛夷の花を探すが見つからない。
妻は読書していたにも関わらずちゃんと観たという・・・

これと言った事件もなく、他愛もない夫婦の会話だけで成り立っているような短編だが早春の旅情をかきたてるような一編に仕上がっている。
主人公夫婦の関係性や商人風の夫婦の様子からいろいろな事柄が想像できる。
時はちょうど3月半ばで春に先駆けて咲く辛夷の花が際立って印象的である。

コブシの花はつぼみの形が空に向かって拳を突き出しているように見えることからその名がついたと思い込んでいたが、その実がごろごろと繋がっているのが拳に見えることからついた名であることを知った。
またコブシは日本固有の花で漢字で書く辛夷は実は中国では木蓮のことをさすのだそうだ。
漢方薬に「辛夷清心湯」という生薬がある。この薬は副鼻腔炎やアレルギー性の鼻炎などに調合される。
実は昨夜この薬を飲んだばかりで「辛夷」の部分をコブシだとばかり思っていたがどうやら木蓮の花のつぼみのことのようだ。
木蓮のつぼみはひどく苦いので「辛」の字があてられたのだそうである。

八ヶ岳の山の家に中央本線で行くと日野春を過ぎたあたりの山中に何本も辛夷の花を見ることができる。
クリスマスツリーのように形の良い枝ぶりに綿帽子を載せたように見える。
我が家の庭先にも自生の辛夷の大木があるが何故か花の数は少なく、4月半ばごろに開花する・・・
標高1000メートルは春は遅い。

実は八王子の我が家の近くにも・・・散歩コースのイシバシイリ緑地の入口に見事な一本がある。もうすぐ開花するに違いない。

yodaさんの投稿 - 16:31:20 - カテゴリー: 依田先生の徒然日記
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