"遊悠読書・青梅雨"

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遊悠読書・青梅雨

78歳





予報通り朝から雨であった。
時折、小止みになったりしたが風も吹いていて何となく気持ちがざわつく。
こんな日こそ落ち着いて部屋にこもって読書である。
それもこの季節ならではの本をチョイスした。
毎年、必ず読むことにしている「青梅雨」(永井龍男著・新潮文庫)
ブログを始めた14年前の6月にもこの本のことを紹介している。
それからほぼ毎年何らかの形で書いているが、我が読書の定点観測のような本である。

この本に出会ったのは今から40年ほど前、町田市の鶴川第四小学校に勤めていた頃だ。
当時PTAの有志と読書会をやっていて、そこで取り上げた本だった。
メンバーは母親たちで最盛時には20名ほどの参加があり、教師の側は3名が加わった。
どのような経緯でこの本が選ばれたのかは覚えていないが、おそらく私より10歳年長のM先生が推薦したのではないかと思う。
物語は藤沢〜鎌倉の間を走っている江ノ電のとある駅の住宅街で起こった心中事件なのだ。
M先生は鎌倉にあった某区の健康学園に勤めていたことがあって鎌倉周辺を舞台にした文学作品などに詳しかったからだろうと思う。
それにしても心中事件など、穏やかではないのだが、77歳になる家長の大田千三さんとその妻(67)そしてその実の姉(72)そして夫婦の養女(51)が死に至っていく様子を淡々と描いているのである。

永井龍男は昭和の時代に活躍した人で短編の名手とも言われたが、すでに忘れられた作家となってしまったかもしれない。
この小説は新聞記事を題材にして書き始めているのだ、新聞の事実だけを伝える乾いた文章を膨らませてたった一夜の4人の登場人物の気持ちの在りようを丁寧に描いて行く。
事件は陰々滅滅であるが死と言うものをこのように淡々と描ける筆力に感心すると同時にいつか訪れる死を客観的に思う事が出来る。
実は今年私は主人公の太田千三さんの歳を超えてしまったのだ。
今までは主人公に自分の気持ちを重ねながら読んでいたのだが何となく複雑な心境である。
特に、このところ体調がすぐれず、月末の入院の事を思うと憂鬱なのだが、返ってきっぱりとした気分になったように思えた。

ブログの検索欄で「青梅雨」を入れると過去に書いた文章が出てくるのだが、やはり年によって微妙に読み方が変化している事が面白い。
また、文章によって懐かしい人が何人か蘇ってきた。




yodaさんの投稿 - 16:41:11 - カテゴリー: 依田先生の徒然日記
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