"入院読書・遠野物語"

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入院読書・遠野物語

民俗学の原点







10日間にもわたる入院生活の無聊を慰めてくれたのはやはり読書だ。
今回は入院日を指定され、ある程度の期間も分かっていたので、あらかじめ何を読もうかと計画のようなモノをたてていた。
それは、普段ではあまり手を延ばさないもので出来ればもう一度きちんと読んでおきたいモノを考えた。
そこでまず選んだのは柳田國男の「遠野物語」である。
以前に何回か読んだ記憶があるのだがきちんと初めから通して読んではいないのだ。

この作品は柳田の民俗学の出発点となった作品で明治43年(1910年)に上梓された。
内容は岩手県の遠野地方に伝わる逸話や伝承などをまとめた説話集である。
柳田自身が語り手から直接聞いたものではなく、遠野地方の民話の蒐集家である佐々木喜善より語られた話を筆記・編集したという形で出版されている。
当初は自費出版で350部が発刊されたが、日本の民俗学の先駆けとなった作品である。
その内容は天狗、河童、座敷童子、オシラサマ、などの妖怪に関する話や山姥、神隠し、臨死体験、祀られている神、それぞれの行事等その内容は多岐にわたる。
話は全部で119話となっているが今から100余年前の世界に迷い込んでいく心持ちであった。

思えば物語が語られてからたった100年ちょっとしかたっていないのだが科学では解明できないような怪異の世界が大真面目に展開されているのだ。
遠野と言えば私事だが3・11の大震災の後に私の蔵書を3000冊ほど寄付したのだが、その受け入れ先が遠野の博物館であった。
教え子ので運送業をしている大阪に住むH君に頼んで4トントラックで運んでもらった。
そんなご縁も感じながら読み進めていったのだが、この遠野はわが故郷と浅からぬ縁がある事が分かった。
第24話にこんな記述がある。
「村々の旧家を大同というは、大同元年に甲斐の国より移り来る家なればかくいうとのことなり。大同は田村将軍征討の時代なり。甲斐は南部家の本国なり。」
遠野は南部家1万石の城下町だそうで南部家は陸奥の国を治めていた豪族でその出自はわが故郷の身延町のお隣の南部町なのだ。
南部家の事は知っていたけれど遠野も南部家の城下町であったことは初めて知った。

無聊を慰めるどころではなく数々の説話に魅了されて是非、元気になったら遠野を訪れてみたいと思った。
IT時代と言われあらゆる謎が解き明かされて行くような時代の中でたかだか100年前にはまだ怪異と共存できる時代があった。
そしてそれはITでも科学でも解明できない犯してはならない領域ではないかと思った。
日本人の原点がそこにはあるように思えたのだ。



yodaさんの投稿 - 17:18:30 - カテゴリー: 依田先生の徒然日記
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