"忘れ得ぬ人・手袋"

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忘れ得ぬ人・手袋

プレゼント







もう少しH君との思い出を記しておきたい。
「父さんの家庭訪問」の初めての大阪行きの時のことだった。

「先生の手そんなに大きくないですね」
と奥さんが言った。
「先生になにか記念のプレゼントしようと思って父さんと相談したら手袋が良いと言うのですよ。季節もこれから暖かくなるのに・・・と思ったのですがね」
会食の後、リボンのかかったデパートの包みを渡してくれた。
「父さんは先生の手が大きいというものですから、Lサイズを選んだのです。奥さんのは普通サイズにしておきました。大丈夫かしら」
包みを開いてさっそく手にはめてみると確かに少し大きかった。

私の手が大きいと思ったのはおそらく小学校の時によく叱られていつも目の前に平手が迫っていたのだ。
子どもの目からすればその手は大きく見えたに違いない。
そして私が近づいて行くととっさに防御の姿勢を取って頭をかばうようになっていた。

それにしても手袋を何故プレゼントしようとしたのか謎だった。
そこで聞いてみるとニヤリと笑うだけで応えようとはしなかった。
家族のいる前では何となく話しにくいような雰囲気もあった。
それから東京に帰ってお礼の電話をした時に聞いてみた。
どうやら子どもの時に私から手袋をもらったのだそうだ・・・そのお返し。

その年の冬、珍しく雪が積もって子ども達は大喜びだった。
こういう時は皆ソワソワして授業にはならないので外の雪の積もり具合を図って授業を潰して雪遊びをさせた。
最初の内は雪だるまを作ったりしていたがいつの間にか男女間で雪合戦となっていた。
子ども達は皆朝からの雪にそれなりの装備をしていてほとんどの子が手袋をはめていた。
しかし、H君だけはかじかむ手に息を吹きかけながら雪玉をにぎっていた。
そこで私のしていた軍手をかしてあげたのだ。
雪合戦が終わって教室に戻った時にH君が返しにきた。
「いい、それはお前にやる。先生にはまだ替えがあるから」
というと、チョット困ったような顔をしたが軍手を持って自分の席に戻った。

どうやらその時もらった軍手のお返しだったようだ・・・訥々と電話の向こうで語った。






yodaさんの投稿 - 16:53:15 - カテゴリー: 依田先生の徒然日記
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