"透析日記・会話"

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透析日記・会話

野村さん







世の中はコロナのことで戦々恐々としているが我がクリニックは淡々と事が運び、まったく変わらぬ日常が繰り返されている。
月曜日の院長回診の時に手洗いのことだけは注意された・・・それも食事の前に手を洗うように言われた。
患者同士はほとんど交流はなく、隔日で4時間以上も顔を合わせているのだが言葉を掛け合うことはない。
挨拶だけはするようにしているが、若い人などは返事が返って来ることがない。
これから先何年か一緒の空間に居るのだからもうちょっと言葉の通い合いぐらいあっても良いと思うのだが・・・
両隣のベッドとの間隔は1メートルほどだが眼に見えないバリアーがある。
残念だけれどお隣の人の年齢も名前も知らない。
初めてベッドに座った時にはすでに隣の人達は透析が始まっていたので言葉を交わすような雰囲気ではなかったのでそのまま今に至っている。
昨年、東海大の病院に入院していた時にも感じたが今の社会構造の縮図のようなもので無縁社会なのである。
30年ほど前には腎臓結石の手術で入院した時に同室の人と仲良しになり、今も交流が続いていて盆暮のやり取りもある。

と、昨日の透析が終わって更衣室で着替えをしている時だった。
ベッドが離れているところの人で顔だけは見知っている人から声を掛けられた。
「おたく、野村さんに似ていると言われませんか」というのだ。
一瞬なんのことを言っているのか分からなかったので「野村さんって・・・」と聞いた。
「野球監督の野村さんですよ」というではないか。
「言われたことはありませんよ・・・似ていますか」と返すと、
「そっくりですよ」と言われてしまった。
私が野村監督に似ているならばタカコサンはさしずめサチヨ夫人というわけか・・・

家に帰って「俺、野村監督に似ていると言われたけれど・・・似てるかなぁ」というと、
「顔の形が似てるんじゃないの・・・」とそっけなく言った。
そして、「間違ってもイケメンに似ているなんて言われないから大丈夫」と付け加えた。
何が大丈夫なのか分からないが、俺が野村さんならアンタはサチヨ夫人と言おうと思ったがぐっと飲み込んだ。
「人間は顔じゃないからね・・・」ともう一言。

だからなんだと言うのだと言いかけたがこれも飲み込んだ。

yodaさんの投稿 - 16:14:34 - カテゴリー: 依田先生の徒然日記
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