"季節だより風だより・青梅雨"

07 / 11

季節だより風だより・青梅雨

梅雨明け








どうやら今週中には梅雨は明けそうである。
昨日は一日真夏を思わせるような暑い日となったが、今日は晴れたり曇ったり、時々、ぱらぱらと降ってきたり、それに遠くから雷の音が聞こえてくる。
各地でゲリラのような大雨が降って、痛ましいい災害も起こっているようだ。

ところで毎年、梅雨の時期になると読む本がある。
このブログを始めた2005年から続けている。
おなじ物語を読んで年を旧るごとにどのような感想を持つか・・・物語の定点観測のようなものだ。
物語は「青梅雨」(永井龍男・新潮文庫)で短編である。
永井は戦前は文藝春秋の編集者を勤め、戦後になって小説家に転じた。
今はほとんど忘れ去られている作家であるが短編小説の名手と言われていた。
私がこの小説に出会ったのは今から50年ほど前、町田市鶴川の小学校に勤めていた頃に親との読書会で取り上げたのだ。
それから35年程経ってまた巡り合うことになった。
このブログを始めるきっかけを作ってくれた北野駅前三晃堂書店の店主テンさんとの交流によってこの本との再会があった。

物語の展開はまずは冒頭に一家心中の新聞記事を載せている・・・場所は藤沢市(F市となっている)の江ノ電の二つ目の駅となっている。
陰々滅滅とした梅雨の夜の描写があり、主人公の太田千三さん(77歳)が家にたどり着き、ほぼ一家の会話で物語が展開していくのだ。
外はジットリと降る雨・・・しかしこれから死を迎えようとしている人たちの会話は意外と明るくのびやかだ。
千三さんは一家の後始末のために東京に出掛けて大事にしていた宝石を売ってくる。
同居している養女春枝と妻の姉の林ゆきは藤沢で行われたレビューを観て帰ったところでその感想を語り合っている。
千三の妻は具合が悪く家に一人残っていて夫や養女の話を聞いている。
これから死に逝く人々の会話ではない・・・けれど夫婦二人で交わす会話がしみじみ。
「夕べの約束通り、私はもう何も言わないがお前の方から言っておきたいことはないかね」
「永い間ありがとうございました」
「それは私の言うことだ。意気地のない男だったよゆるしてくれ」
「もうそんなことは一切言わないというのが夕べの約束でした。ごめんなさい」
「永い永いような三月か半年のような、まあそんなものなんだろうな。人の一生というものは」
私も千三さんの年を超えて3年も過ぎてしまった。

物語の中に新しい発見はないがまた来年も読もう。





yodaさんの投稿 - 17:41:21 - カテゴリー: 依田先生の徒然日記
コメント
コメントはありません
コメントを追加
このアイテムは閲覧専用です。コメントの投稿、投票はできません。
トラックバック