"スミレさんのスケッチブック"

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スミレさんのスケッチブック

バトル。


 カーテンのすき間から、朝の光がさしこんでいました。時計を見るとちょうど、8時になるところでした。『ねすごした』と、あわてて着替えをしました。隣のベッドを見ると、パジャマがだらしなく脱ぎ捨ててありました。
 おにいちゃん、起こしてくれれば良いのに・・とおもいました。こんな時間だと、どんなにがんばっても遅刻です。
 と、今日は春休みの第一日目で日曜日でもあることに気がつきました。それなら、もう少し寝ていようかと考えましたが、下の階から、コーヒーの香りがただよってきました。お父さんも、起きているんだと思いました。部屋を出て階段の降り口まできたときです。
 「おまえも、そろそろ勉強始めたらどうだ。受験以来、だらけているぞ。」と、お父さんの声が聞こえてきました。
 「ちゃんとしているもん。」お兄ちゃんのとがったこえがこたえています。
 「父さんにはそうはみえないけれどな。お前、T中を落ちたとき、中学に行ったら頑張る。と、いったじゃないか。」
 お父さんの眉間にしわを寄せたいらいらしたときの顔がみえるようでした。
 「ぼくはまだ中学生じゃないもん。」お兄ちゃんは声を荒げて言い返していました。一番言われたくないことを言われてしまったようです。
 ぼくは今、リビングに入っていったら、とばっちりを受けるかもしれないとおもって、階段に腰掛けてもう少しようすをうかがうことにしました。
 「もう、小学校は卒業したんだ、そんなのへ理屈というものだ。中学生でないというならば、今までの自分を反省して小学校の教科書の一つでも開いてみるものだ。」
 お父さんの声は完全に怒りのバージョンに入っていました。
 お兄ちゃんは何も答えませんでした。
 「まったく勉強もしていないお前が受験したいといったとき、反対だったけれど、これもいい経験になるとおもって許したけれど見事失敗。でも、きっと失敗の経験も生きるとおもって、今日までがまんしてきたんだ。」
 お父さんはおにいちゃんの痛いところをついているようでした。とその時です。
 「グジャグジャうるせえんだよ。」
 お兄ちゃんのはじけるような声がきこえてきました。
 そして、『ピシャ』という音がひびいてきました。
 お兄ちゃんはリビングを飛び出して階段を駆け上ってきます。ぼくは脇によって通り道を空けました。お兄ちゃんのほほには赤くぶたれたあとがありました。子ども部屋に入って荒くドアを閉めました。
 ぼくはどこに行こうか一瞬まよいましたが。リビングに降りていきました。
 「おはよう」
と何事も知らないような振りをして、お父さんに声をかけました。
 「おはようというほど早くはないぞ。」お父さんは新聞からめをあげていいました。
 「お母さんは」と聞くと、
「仕事があるからって出かけた。お前の食べる分はとってある。」
 といって目でお皿のあるほうを示しました。
どうも、おかあさんがいないので、最悪のバトルとなってしまったようです。ぼくは急いで顔を洗ってテーブルに着きました。
 「お前もコーヒー飲むか」
 お父さんはなにごともなかったようないいかたでいいました。
ぼくは、首を横に振って冷めたスープと冷たくなったトーストを出来るだけ急いでほおばりました。


 
yodaさんの投稿 - 17:15:38 - カテゴリー: スミレさんのスケッチブック
コメント

柿の木文庫 鈴木真佐世さんの投稿:

続きを待っていますが、なかなか載りませんね。続きをよろしくお願いします。
2007-11-05 13:02:15

yodaさんの投稿:

春さんのスケッチクは4月から5月にかけて一応完結させました。過去ろぐをたどっていただくと出てくると思います。ここになぜこの章があるのか自分でも不思議です。
現在この物語は編集者の手に渡っています。書き直しも何度かしました。明後日にはもう一度確認のために無言館に行ってきます。
本になるのは来年の春頃だと思います。
2007-11-05 16:33:20
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